市川の
大きな独り言、小さな叫び



[2021.11.18 Th]

GPA again

 私はかねてから GPA (grade point average) の扱いに対して疑問を呈してきた。何度も繰り返すが、評点に関わる全ての教員が同じ基準で点数を付けなければ、この数値は意味を成さない。学内だけでも GPA の数値をもとにして判断される場面は多い。0.1 の差が問題になることさえある。現実は、相当にいい加減に扱われている、と言っても間違いはないと私は思う。もう、どうにも我慢が出来なくなったので、大学に訴えかけてみることにした。本学では 2005 年から『学長へのご意見箱』と言う投稿サイトが設けられているため、10月1日に下記の投稿を行った。

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GPAの扱い

 現在学内の様々な場面で学生の学業成績を表す指標としてGPAが使用されていますが、それははたして妥当なのでしょうか。近年GPAが重視されるにしたがって,教員の成績のつけ方が年々甘くなっているように感じるのは私だけでしょうか。特に昨年来のコロナ下では一段とその傾向が激しくなったようです。学生との面談の前に成績を調べていると。GPCが3以上の科目が沢山ありました。ひどいものでは8割以上の受講者に秀がついています。絶対評価か相対評価等も含めて、教員間の成績分布の不均衡を放置した状態で産出されたGPAを奨学金をはじめとする様々な目的への使用は公平性を欠いていると言わざるを得ません。ことに評価の習慣の異なる学部や分野をまたいだ比較は無意味を通り越して危険ですらあります。

 成績評価は教員個人の不可侵な裁量である、との意見も根強いようですが、ことGPAの算出への寄与を考えた場合、各教員が自由に成績をつけても全く妥当と言えるのは、すべての学生が同じ科目を履修する場合に限られるはずです。

 そこで、教員の採点基準のばらつきによる不公正を是正するために、私はGPAの算出に際して受講者数に関わらず全ての科目において、元となる各科目の成績の平均点を一定にすることを強く主張したいです。その理由は、GPA算出に対する各科目(各教員)の影響力を均一に保つことです。具体的には、100点満点ならば正確に80点とすること、GPCならば可能な限り2.5に近づけることを義務付けるべきです。すでにこのような考え方で自分の担当科目の成績をつけている教員も少なからずおられます。  数値で示されると客観的で正しい気がしますが、決してそう言う訳ではありません。現在のGPAはその数式の根拠を大きくはみ出して独り歩きをしています。

 私の主張の背景となる考え方に関しては、ここでは字数に制限があるため、下記ページの第3段落を参照していただきたいと思います。

http://www.ee.ehime-u.ac.jp/~optele/voice190911.html

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 これに対して、10月8日に担当の事務部門から下記の回答が私宛のメールで届けられた。(投稿サイトにはこの回答は掲載されていない。)

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 ご意見ありがとうございます。
 GPAの扱いについては、さまざまな場面で利用されており、御指摘のような 問題も指摘されています。
 一方で、「成績評価は絶対評価で行うべきである」 「成績評価は教員個人の 不可侵な裁量である」といった意見もあります。
 今後の検討課題といたします。

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 何年も前になるが、投稿サイトへの全ての意見を確かに学長は読んでいる、と大学は説明していた。今回の私の投稿を学長が実際に読んだかどうかは別にして、この回答は一応、GPA に対する本学の公式的な見解と見て良いだろう。すなわち、「GPA の現状の扱いに問題があることは承知しているが、(教員間の意見の相違もあって)手を付けられないでいる。」と私は理解した。

 「成績評価は教員個人の裁量であり、他者がこれに介入することは学問の自由を侵す行為である」は、各科目の単独の評価においては、間違っていないと思う。しかし、多くの教員の担当科目の点数を持ち寄ってその結果を一つの数値で代表したものを活用する段に至っては、正当性を欠いていると言わざるを得ない。そもそも絶対評価の科目と相対評価の科目の点数をただ混在させて総合点を計算するなど、科学的・理性的な方法の初歩の段階で誤っている。どうしてこんな大事なことを放置したままでいられるのだろうか。これは教育職としての責任放棄、あるいは職務怠慢としか思えない。教員にとって GPA の僅差は計算の誤差範囲かもしれないが、学生にとっては人生が変わる場合もあるのが今の運用である。

 以前にも述べたが、「各科目の合格者の平均点を80点にする」ことを私は強く主張したい。合格者数に関わらず各科目の影響力を同一に保つためにこれ以外の方法があるだろうか。この基準に従わない評点が提出されたならば機械的に点数の換算を施せば良い。ただし、細かく見れば解決できない部分もある。たとえば、合格者2名で(90点、100点)や(60点、70点)は(75点、85点)とすべきか(60点、100点)とすべきか。やはり、基準が必要だろう。大学は一刻も早く対応しなければならない。