市川の
大きな独り言、小さな叫び



[2019.3.18 M]

4月から働き始める君達へ

 もう10年以上も前になるが、卒業式の後の祝賀会で卒業生へのはなむけとして話した内容を紹介したい。

 私のこの話は、会社員・公務員・教員も含めて、給料を貰いながら組織に雇用される者を想定している。現実に、大卒就業者のほぼ全員はそこから社会人生活を始めると言って良いだろう。

 社会人になったその日から、仕事日記をつけることを強く勧めたい。これは職場で作成する業務日誌ではなく、自分だけの記録である。では何を書くのか。簡単に言えば、業務日誌には書かない(書けない)内容を記録するのである。何よりも必要なのは、仕事の開始・終了時刻である。職場での勤務時間やタイムカードに刻印されるものはまず記録し、さらに通勤時や自宅等で仕事(に関係する作業)をした場合には洩らさず書き加える。このような数値はいざとなると重要な証拠になり得る。 (補1)

 職業人として組織の中で働いていると、嫌なこと、困ったこと、腸の煮え繰り返ることを経験しない人間はほぼいないだろう。しかも、その内容を誰かに話すことが出来ない場合も多い。また、幸運にも話しを聞いてくれる相手がいたとしても、当事者ではないので、必ずしも自分の境遇を理解してもらえる訳ではない。そこで、これらを日記に書くのである。怒りをぶつけるように書きなぐってストレスを発散できるかもしれない。一方、良かったこと、特に、他人からは評価されていなくても、自分で自信になったことや秘かに自慢したいことを書き記しておくのも良い。このような形の記録も大切な財産と言える。 (補2)

 このような内容の日記だから、これは当然、他人に見せるものではない。間違っても職場の机やロッカーの中に置いていてはいけない。自宅で人目につかない場所にこっそりしまって置くのが正解である。働き始めるとそのうちどこかで PDCAサイクル、要するに plan-do-check-action という言葉を聞く事もあるだろうが、この日記は書きっ放しで構わない。自分で読み直すのは結構だが、積極的に利用しようと無理をするのはいけない。書き続けることが何よりも大切で、書いた後で二度と見なかった、と言うのであれば、それはそれで幸せな職業人生だったと言えるかもしれない。

 最後に重要な点は、この日記をどこに記すかである。一番良いのは、実験ノートのように、綴じたノートを使用することだろう。ルーズリーフやシステム手帳は使ってはいけない。その理由はもう理解できると思う。その一方、サイバー世代にとってはメールを利用する手もある。自分の個人アドレスから、別の個人アドレスへメールを送るのである。毎日の操作が面倒であれば、(最長)一週間単位でも良いのではないか。こうすると、自分が書いた内容が確実に記録に残る。

 最初からあまり身構えると大変なので、とりあえず勤務時間の記録から始めれば良い。単なる数字を書くだけならば、頭も心も使うこともなく簡単である。


補1
 夫の過労を疑う妻が出勤・帰宅時間を克明に記録する、と言う話は良く聞く。

補2
 組織人として、遠い将来に、自分が逆の立場になっている可能性もある。