市川の
大きな独り言、小さな叫び


[2018.03.19 月]  卒論研究室の選択
[2018.04.07 土]  英語の試験
[2018.05.07 月]  ボランティア
[2018.06.11 月]  動員
[2018.10.24 水]  評価
[2018.11.30 金]  良い授業
[2019.03.18 月]  4月から働き始める君達へ
[2019.03.25 月]  4月から働き始める君達へ(2)
[2019.09.11 水]  試験の点数
[2020.02.10 月]  留学すると言う事
[2020.11.23 火]  学生、それとも生徒?
[2021.11.18 木]  GPA again


[2023.1.16 M]

女子優先枠

 昨年12月下旬に、幾つかの大学工学部で入学試験に際して女子枠導入の動きが進んでいる、との新聞報道があった。

 実は、私は 2009年10月にあった所属学科の会議で、一般入試において定員の5%相当の女子優先枠を設ける提案をしたことがある。しかし、女性を含む全教員から猛反対を受けた。まさに袋叩き状態だった。それでも諦めきれなかった私は3日後に、実現のための助言を得ようと、大学本部の入試課長を訪ねた。ところがと言うかやはりと言うか、結構食い下がったのだが、結果は同じでまるで相手にされなかった。とんでもない話を待ち込まれて呆れて相手にしたくないという不快感丸出しの入試課長の目を今でもはっきりと覚えている。

 私が女子優先枠を提案した最大の理由は受験者層の拡大であった。文部科学省の学校基本調査の数値をもとに2009年までの10年間の電気系学科における女子入学者比率を計算をしてみところ、全大学で8.9%, 国立大学で10.4% であるのに対して、所属学科では1.5%に過ぎなかった。過去3年間に限定すると、さらに差は広がっていた。女子の割合の低さに対する当の女子学生達の意見については2005年頃から機会を見つけて個人的に聞いて回っていた。要約すると「受験先の女子の比率は気になる。もし0であればおそらく受験はしない。」と言うことであった。このことは、私の所属学科は世代人口の半分から全く進学先の候補とはみなされていないことを示している。いずこの学科・コースも少しでも優秀な学生を集めようと躍起になっている中、そもそも受験者の背後人口が半分というのではまるで話にならない。学科会議でも入試課長にもこの旨を説明したのだが、理解されなかった。ここで私はもうこの話は無理だと諦めたのである。

 ところが、2015年に大学電気系教員協議会の席上で、名古屋工業大学機械工学科では1994年から現役女子高生に対象を限定した推薦入試を始めており成果があがっていることが報告された。私の思い付きのはるか以前に既に同様のことが実現されていたことを知り、驚きと先を越されたていたとの軽い衝撃はあったが、我が意を得たり、と感じ入ったものである。その一方、同じ場で、九州大学が一般入試に女子優先枠を導入する案を2010年に表明したものの、学内外の猛烈な反発を受けて断念したことも報告された。

 ちなみに、私が所属するコースの現在の女子比率は直近の2年次生で8.9%である。但し、工学部の入試制度が変わり2年次からのコース配属になったため、過去の数値との直接的な比較には注意が必要だろう。

 この件を通して私が得た教訓は、「どんなに馬鹿げていると自分が思っているアイデアでも、広い世界では大概、既に誰かが手を付けている」、「本気ならば簡単にあきらめることなく手を尽くすべきだった」の二点である。