愛媛大学附属図書館報「図書館だより」第 79 号 2005.12.15 p.7

(愛媛大学附属図書館の許可を得て掲載)

学生にすすめるこの一冊 〜 特集 〜

市川裕之 先生(工学部・電気電子工学科)

『即興詩人』
アンデルセン著 ; 森鴎外訳
岩波書店,1969 (図書館 開架図書)
上巻 080.4||I1||96(1)
下巻 080.4||I1||96(2)

 原作は童話で有名なあのアンデルセンである。中学か高校の国語の授業の日本文学史の単元で,森鴎外の訳文はアンデルセンの原作よりも素晴らしいと評されている,と習ったことがいつまでも頭に残っていた。ようやくその本を手にした大学4年生の時のこと,はたして,雅文調の文体は美しかった。小説の内容自身はもはやあまり受けることのないメロドラマであって,欧州でも評価されなくなっていたのだが,日本では鴎外の名訳により長く人気を博しているのだと聞いていた。まさに流れるような文章に引きずり込まれて,岩波文庫の上下二巻をあっと言う間に読んでしまった。
 本当ならば,恋に恋する高校生の頃に読んでいて貰えれば,大学生の日本語に苦しむ私達の仕事も随分と楽になると思うのだが。