応用物理 2015年2月号 Vol.84 No.2 p.178

(応用物理学会の許可を得て掲載)

読者の声
『読めない? 魅力的なページ』

市川 裕之
愛媛大学 大学院理工学研究科 電子情報工学専攻

 今年から「応用物理」の内容や形式が大きく変わり,ページをめくる意欲も増したのだが,その一方,困ったことも生じている.具体的な例を挙げれば,2014年11月号の p,880, pp.884-885 などである.写真や模様を背景とする記事は見た目のインパクトは素晴らしいのだが,本文の活字が非常に読みづらい.これは「応用物理」に限らず趣味や娯楽も含めた雑誌全般に言えることである.若い頃は全く気にならなかった,と言うよりは,気付きもしなかったのだが,年齢を重ね老眼が進んでくるにつれて,急激に読み取り困難の度合いも進んできた.例えば,pp.882-883 の見開きで3種類の背景があるが,左へ行くほど読めなくなる.照明の環境がよくない場所,特に乗り物の中などでは,左端の段などは読む気が起こらない.私はもっぱら通勤電車の中で「応用物理」を愛読しているため,パターン背景の記事は徐々に縁遠くなりつつある.最近の号ではこのようなページが増えているようで,特に注目を集めようとする記事ほどこの傾向が強いため,途方にくれることもある.結論を言うと,記事の本文は,可能な限り白背景の黒活字にしていただきたい,と言うことである.

 私はおそらく,会員の年齢分布のかなり端に近づいている(要するに,編集側からすると主たる対象読者ではない)と思うが,一応,正会員の会費を毎年支払っているので,この程度の不満は口にする権利と義務はあるだろうと理解している.「応用物理」が変わってまだ月日もたっていないので,読者の多くはあまり気付いていないのか,寛容なのか,あるいは優れた視力をお持ちなのか,いずれだろうか.折角の機関誌変革に水を差すつもりは毛頭ないどころか,私は毎号楽しく手に取っている.しかし,機関誌はできるだけ多くの会員に快適に読まれてこそのはずである.そのきっかけは記事内容だけではないはずだ.せっかくなのでもう一つ言わせていただくと,光沢のある表紙の用紙は高級感はあるのだが,取り扱い上,不便なことも多い.私は表紙に書き込みをすることも多いので,以前の表紙のほうが ありがたい.もっとも,防水性の点から新表紙を好む会員もおられるかもしれない.

 たかが、機関誌の外観ごときで何をつまらないことを,と思われる方も多いと思うが,以前,American Institute of Physics の機関紙である Physics Today の糊付けからホッチキスへと言う製本方式変更をめぐって,同誌の投書欄で読者と編集側が互いの意見を主張し合っていたことがあった.こんな些細なことを公の場でよくやるものだ,日本の学会誌ではありえない,と少々驚いたものだが,自分の属する学会に関わるどんなことでも自由に意見を言い合える環境は学会の財産であり,運営面にとどまらず,その学会が扱う科学分野の大きな自由度,高い活性,そして開かれた未来にもつながって行くのではないか,と後になって気が付いた。この点,海外の機関誌投書欄は非常に面白い.毎回,必ず目を通すようにしている.


以上